蝶々と紡ぐ記念日
今日は僕の誕生日。
自分ではすっかり忘れていたが、彼女からのお祝いメッセージでかろうじて思い出したくらいだ。
彼女は「願い事を一つ言って!」と言ってくれたため、折角なので僕の我儘に付き合って貰うことにした。
2人で訪れたのは「博物館」。
僕は博物館の展示室前でそっと彼女に囁いた。
『目を閉じて。』
「どうして?」
彼女はキョトンとした顔でこちらに尋ねた。
『きみをびっくりさせたいから。』
僕がそういうと、彼女はすぐに目を閉じた。
僕は彼女が転ばないように「とある場所」に連れて行き、入り口で立ち止まった。
『目を開けていいよ、お姫様。』
僕がそういうと、彼女は頬を赤く染めながらゆっくり目を開ける。
すると、彼女の瞳が大きく輝いた。
『ほら、ごらん。』
「わぁ!綺麗!」
彼女はパッと表情を明るくし、目の前の光景に瞳を輝かせた。
色鮮やかなものから漆黒なものまで、幾多の蝶の標本や写真達が並んでいた。
一つ一つがスポットライトに照らされ、まるで光り輝く宝石のようだった。
『これはオオムラサキ。隣はカラスアゲハだよ。』
「蝶々を間近でみたことなかったけど、実はこんなにも色鮮やかなんだね…!」
僕が説明するたび、彼女は頷きながら真摯にコメントをくれた。
そんな彼女が…実に愛おしい。
一通り回り、そろそろ帰ろうかと声を掛けようとしたけれど、彼女はとある方向を見つめ、何かを思い付いたかのように何度かうなずいた。
「シモン、いいこと思いついたよ!」
ーーー
「ブレスレット?」
シモンはキョトンとした目でこちらを見た。
『うん!創作店があっちにあったのを見つけてね、一緒にみたいなって!』
せっかくシモンが素敵な場所に連れてきてくれたのだから、
2人だけの…誕生日の記念品が欲しかった。
シモンは笑みを浮かべ、「いいよ、行こうか。」と言ってくれた。
『これで2人、お揃いだね!』
私はピンク、シモンは紫。
蝶と蔦をモチーフにしたレザーブレスレット。
寄せ合うと二匹の蝶が仲良く飛び立っているように見える仕様になっている。
つまりは…恋人用。
シモンはこの意図に気付いているだろうか、なんて。
チラリとシモンの顔を覗き込んでみると、
シモンはいつもよりも優しく穏やかな顔でこちらを見つめていた。
“Happy Birthday,Simon.”

ハッピーバースデーシモン!少し焦り気味の準備になりましたが、今年もなんとかお祝いできて本当に良かったです。この小説を書きながらシモンへの想いを一層磨き続けねば…!と思いました。(みんなに沢山愛されてるんだよシモン…!)

