縷
・本編18章までの物語の内容が含まれています。ご注意ください。
・暗めの内容となります。
君の横顔を見た瞬間から分かっていた。凛とした眼差しの中に光が灯っていた。僕とは違う君だけの光の色。
僕は君を利用するために、ここに居るはずなのに、君が求める夢に進んで協力している自分がいた。
「……っく、はあ……」
胸を締め付けるこの感覚。まただ。
彼女に出会ってから、ずっとこの痛みが、自分を蝕む。
こんな痛みは味わいたくは無い。何度も何度も君に背を向けた。でもその度により胸が疼く。
この痛みの意味すら分からない。胸がズキズキと痛む。
そして僕は必死に彼女を求めた。もしかしたら、君とならどこまでも行ける。
この呪縛から解き放たれる、と。
「うわ~! お兄ちゃん、絵が上手いんだね!」
楠木がある木の下で君が言ってくれた言葉と、丘に広がる花々、美しい青空を思い出す。
君が僕の絵を見ながらニコニコ笑い、僕も一緒になって笑う。
あの日の足跡から、ずっと辿っていく旅が始まった。
「すみません。シモン教授はいますか?」
彼女が自分の元に来るように仕向けるのは簡単だった。
でも、実際に彼女と目が合った瞬間、不意に自分の胸の中に入り込んだ。
「Ares、分かっているんだろうな? この計画は――」
「何度、私に言わせるつもりだ、Hades。Queenを覚醒させるのは私で充分だ」
彼女の番組に顧問としての地位を獲得し、更には彼女の隣にまで引っ越した。
それもこれも、彼女に眠るQueenの力を覚醒させるため。そのはずだ。その為の私なんだ。
「シモン」
「!」
彼女の声が聞こえる。僕はいま、君という深い森の中にいるのだろうか。ならずっとさ迷っていたい。
そして僕は、いつの間にか君に――
*****
ピピピピ……ピピピピ……
目覚ましの音で、目を覚ますのは初めてだった。昨夜どうやって自宅に帰って食事をし、寝たのか。全く思い出せない。
「なんて夢だ……」
左の手首には彼女から誕生日プレゼントとして貰ったミサンガが付いている。
彼女が嬉しそうに渡してくるのを見ると、自然と手を伸ばし、受け取っていた。
これも何回も切って捨てようとしたのに。結局出来なかった。
「君は僕の心も、身体も絡めて離さないんだね……」
頭を押えながら呟いた。君には届きやしないのに。
2度目のシモン生誕祭に参加でき、大変嬉しく思っております。 あれからもう2年……。時が過ぎるのは早いですね(笑) あれから本章も進み、イベントも多数開催されて、本当に嬉しい限りです。 2回目の誕生日はしんどい内容にしようかと考えました。ごめんシモン、悪気はないんだ。 でも苦しみを乗り越えてこその喜びって必ずあると思うので、その過程はそれぞれ思いを馳せて頂ければ、と思います。 pixivにも作品を掲載していますので、ご一読くだされば幸いです。

